○「方針管理制度」                    兵庫県小野市

1.制度の概要

  住民志向で成果重視。効率的・効果的な行政運営を目指す。
  各部門・各職種が、上位の方針を受け、達成目標・実施項目・期限を設定、
 いわゆるPDCA(プラン・ドゥ・チェック・アクション)のサイクルを実
 践。方針に基づき設定された目標達成へ、実践結果とプロセスを評価してい
 く仕組みである。評価の結果、職員の賞与時に加点主義でインセンティブ給
 を与える。
  自己決定・自己責任の発想のもと、行政を経営と捉え、「市役所はサービス
 産業である」とし、民間の手法を可能な限り取り入れる考え方をしている。
  理念としているところは、
  ・職員の意識改革と政策形成能力の向上
  ・目的を共有化した組織的な仕事の展開
  ・職員はやらされる仕事からやる仕事へ、管理職は、成り行き管理からタ
   ーゲッティングワークへ、仕事のあり方をそれぞれ変革していく
  ・このことから上司と部下のコミュニケーションの醸成
  ・CS(顧客満足度)志向を高める
  ・TM(タイムマネジメント)の意識を高める
  ことにある。
  なお、小野市における「方針管理制度」は、単体としての取り組みという
 よりも、市が掲げる「行政経営の4つの柱」という概念と密接な関係に位置
 付けられており、このことは後段3.で詳細に記述する。


2 これまでの経緯

  5年前、57歳の民間出身の市長が誕生。ほどなく、同じ民間出身の長浜
 市の市長との対談で啓発刺激を受けたことが、この方針管理制度誕生のきっ
 かけとなった。
  平成11年度にスタート。
 

3.「行政経営の4つの柱」とは

  小野市は、行政経営に次のような基本的な理念を掲げている。
  ・行政経営では、業務と施策の中味を抜本的に見直し、効率とサービスを
   同時に改善すること。
  ・行政経営には行政評価が不可欠であり、評価結果は開示されなければ意
   味はなく、市民のニーズと成果の分析を行い、現場レベルの改善に活か
   されることが大切である。まさに、評価から実践へである。
  ・自治体経営戦略の柱は、
   @顧客満足度志向
   A成果主義
   Bオンリーワン
   C先手管理
   の4つである。
  ・基本理念は、
   @市役所は市内最大のサービス産業の拠点で、より高度で、高品質なサ
    ービスをより低コストで提供する責務がある。
   A「今まではこうであった」という前例の踏襲や、「かくあらねばなら
    ない」という固定観念にとらわれないフレキシブルな思考。
   B「意識改革なくして、行動なし」で、目指すは新たな創造と変革。
  ・さらに行動指針として
   @市民=顧客満足度(CS)を高める。
   A現場・現物主義のもと、「目で見る管理」を実践し、「〜だと思います」
    ではなく「〜であります」へ。
   B言われてからやるのでなく、言われる前にやる。いわゆる、後手管理
    から先手管理へ。
   C「何をやっているか」ではなく、「何をもたらしたか」という成果主義
    の徹底。
   D仕事のやり方は、個人のノウハウと組織のノウハウとして水平展開し、
    組織としての仕組み、システムとして構築することである。
  小野市では、このような前提となる理念の展開がトップによって強く語ら
  れ、職員に徹底している。以下の「方針管理制度」はこれらの理念の実現
  手段として、行政経営上のひとつのノウハウとして位置づけられている。


4.「方針管理制度」の具体的展開

 ・年次の具体的な流れ
   4月初   トップ方針の提示
   4月中   各組織、職位ごとに上期方針をブレイクダウン
   4月中〜下 市長が部長からヒアリング。適宜目標の変更も行う。
   9月末   上期方針達成度の評価。職員が自己評価し上司に提出。
   10月初  方針達成度の上司評価。
   10月中  原因分析後、改善案を盛り込んだ下期方針や新方針設定。
   10〜3月 上期と同じ流れ。→次年度上期に反映。
  ※上期評価を12月賞与で、下期評価を翌年度6月賞与でそれぞれインセ
   ンティブ給に反映。管理職手当て部分で、5万、3万円の上積みを行う。
  ※また、それぞれ人事考査に反映させる。
 ・目標設定のポイント
  @できる限り数値目標の設定を行う。データベースで管理する。
  A課ごとに方針を立てさせ、それを進行管理するのでなく、部長として今
   後展開のビジョンを持ち、新しい創造と変革のための自らの目標設定を
   行う。
  B部全体の将来構想や人材育成を視野に入れた施策の構築。独自施策の展
   開。
  C部長の方針は少し抽象的であっても、部下である課長の方針が具体のも
   のとなっていれば、方針はうまく展開していることになる。ただし、部
   長方針レベルで、絞り込みを行い、方針を具体化させることにより、部
   下の方針が立てやすくなり、全体の方針がうまく展開していく。
  D部下との議論(コミュニケーション)を十分重ねた上、部全体の体系表
   の作成を行えば、その時点で方針管理の展開がうまくできているか否か
   が判断できるはず。
  E方針は、上司から部下へと展開していくもの。部下とのコミュニケーシ
   ョンは、自身の方針の決定や部下へのよりよい方針の展開を図るためで
   あり、決して部下の方針をまとめて上司自身の方針とするためではない。
   あくまで方針は、まず上司が設定し、部下へと展開していくものである。
  F方針や計画を立てるということは、進行管理を行うためではない。方針
   の実現へ、困難な課題を浮かび上がらせることで、問題点を顕在化させ
   ることが方針管理制度の目的の一つである。ここに、明らかな問題点の
   みならず隠れた問題点をも顕在化させることが必要となり、その結果、
   問題点が掘り下げられていくところに重要な点がある。


5.その他の特記事項(参考)

  小野市は、トップの経営理念、改革のビジョンを明確に打ち出し、確たる
 方針のもとでさまざまにユニークな施策を展開している。前記「4つの柱」
 のひとつに謳われた「オンリーワン」の実践例として、ここに掲げておきた
 い。
  ・「播州そろばん」が有名であることから、学校教育で「計算力日本一」を
   目指す。「珠算の甲子園」といわれる全国高等学校珠算大会に力を入れる。
  ・西日本の物流拠点として「小野工業団地」「小野物流等業務団地」の展開
   に力を注ぎ、充足率99%を誇る。
  ・5年連続「貸出し冊数全国1位」の図書館(同人口規模クラス)。
  ・市立病院の黒字経営転換
  ・「短歌の郷・おの」をアピール。郷土が輩出した俳人にちなむ賞を平成2
   年に制定。以降海外からも応募がある。
  ・65歳で「第2の成人式」。
  ・市民満足度達成のための施策として、市民課窓口の土曜開設、一日一万
   歩運動の展開、ハートフルサービス評価制度(アンケート用紙をいたる
   ところに配備)、データベースの情報開示、などを展開。
  ・広報・公聴の多様な展開として、
   ○「市長への手紙」ハガキを市内随所に配備、ネットでも受付。
   ○市政懇話会の開催。15名程度の希望団体を募集。
   ○まちの特派員  ○行政サービス研究グループ  ○まちづくりモニ
   ター制度  ○まちづくり女性リポーター制度  ○子ども・女性会議
   の開催  などを展開し、市民の声をデータベース管理し、迅速、効率
   的に対応。また職員の課題解決能力の醸成、「情報は市民の財産」との意
   識を徹底している。
  以上は、視察当日にいただいた書類に紹介されたものであるが、これ以外
 に、次のことを付記しておきたい。
  ・市民サービス課の設置
   市民からの問い合わせに、「現場主義」で必ず現場に急行、市民がその速
   さに驚くという。必ず返事をする。結論が長引く場合は、必ず途中経過
   を知らせる。
  ・ホームページにおける市長のエッセイ「こんにちは市長です」は毎週更
   新、市民に向けて新鮮な話題を提供するとともに、市長の改革への取り
   組みなど、熱い思いが毎週語られている。
    ここに少し、例を引いておきたい。(順不同、省略あり)

   ≪体力つくり優秀組織表彰「文部科学大臣賞」受賞決定≫

   夢プラン2010おの総合計画のいきいきプロジェクトで市民の健康づ
   くり、加えて、仲間づくり、地域づくりというコミュニティーを図るこ
   とを目指し、平成12年からはじめた「ハートフルウォーキング一日一
   万歩運動」事業も早や5年目に入っています。

   その登録いただいたウォーカー宣言者も今では人口5万人の1割を超え
   約5,500人(9月末現在)を数えます。ミリオンウォーカー(10
   0万歩達成者)も1,200人、1000万歩を達成した方も200人
   もおられ、中でも、最高達成歩数5,100万歩、一歩80センチと仮
   定して地球約4万キロを一周した方もおられます。早朝・夕方にはウォ
   ーキングを楽しまれている人やグループの姿を本当によく目にします。

   そして、この度、ハートフルウォーキングの取り組みなどが評価され、
   来週30日(土)大阪で行われる「第46回健康・体力つくり運動推進
   大会」(主催文部科学省、(財)健康・体力づくり事業団他)において、
   平成16年度体力つくり優秀組織表彰「文部科学大臣賞」を授与される
   こととなりました。全国で2ヶ所のみです。

   また、先月も、結核予防に顕著な功績があった市として、兵庫県では小
   野市のみ、財団法人結核予防会総裁の秋篠宮妃殿下から結核対策推進優
   良市表彰を賜りましたところですが、このように素晴らしい賞をいただ
   くということは、嬉しく思うと同時に、市民の皆さんとともに取り組ん
   できた小野市のまちづくりが全国で評価された証であると思っています。

   ≪行政改革度「ベスト80」ランクイン≫

   先般、日本経済新聞に日本経済新聞社と日経産業消費研究所が全国の7
   18市区を対象に行った「行政の改革度」調査の記事が載っていました。
   情報公開をはじめとする透明度、効率化・活性化度、市民が行政ととも
   に地域づくりに参画できる体制づくりを中心とする市民参画度、窓口サ
   ービス・公共施設サービスの利便性である利便度の4つの要素から改革
   の度合いを評価する調査です。

   小野市はそのベスト80の中にランクインし、120点満点中65.9
   点の77位です。兵庫県の中では神戸市、西宮市、伊丹市につづく4位
   です。近畿の中でも98市中10位です。
   過去にも、「ニッポン全698都市ランキング2002」(週刊ダイヤモ
   ンド)において、「快適性」「経済力」「成長度」の3項目全てが全国平均
   以上の都市を決める「ベストシティ60ランキング」で55位にランク
   インするという評価を受けましたが、改革という面でも、わずか人口5
   万という小さな市の取り組みが一定の評価を受けたという証だと思って
   います。

   これからの時代に向け、好むと好まざるとにかかわらず、多種多様化す
   る住民ニーズに対応するため、どの市町村においても行政改革は当然必
   要なことでありあります。これまでの行政の権限、財源、さらには、人、
   もの、情報までも中央に集中させた、全国画一的横並びな制度疲労をき
   たした古いシステムを、市民や地域の視点にたったサービスを提供し向
   上しつづける新しいシステムへ更新する必要があると思っています。

   ≪「市長への手紙」でまちづくりに参加≫

   今年も、7月1日から「市長の手紙」をスタートしました。今年で6回
   目の実施です。これまでに道路、学校、公園などまちづくりに関して、
   手紙も含め約3,500件のご意見等が寄せられています。日ごろ皆さ
   んが感じておられるご意見、ご提案などをお聞かせいただきたいと思い
   ます。

   昨年は180通のお手紙をいただき、市政への貴重なご意見として活用
   させていただいています。小学校の遊具の設置、市民会館小ホールの手
   すりの設置、市民病院の冷暖房の時間延長など貴重な提案として採用さ
   せていただきました。市民の方からは「簡単で、気軽に、市長へ提案で
   き、手紙でまちづくりに参加できる」というお言葉もいただいています。

   この「市長への手紙」の他にも、市政懇話会、まちづくりモニター制度、
   子ども議会など広聴業務を進めていますが、これらは3つの項目を基本
   として取り組んでいます。それは、「手法の多様性」「聴いた声の活用と
   管理」そして「市民へのフィードバック」です。

   幅広い市民層から、多くの声(要望・苦情・意見・提案など)をお聞き
   するためには、その手法も多様でなければなりません。そして、頂いた
   ご意見は、「市民の財産」として、直ちに対応するもの、長期施策へ反映
   するもの、短期施策へ反映するもの、関係機関と協議して対応するもの
   などに区別し、施策へ反映させるとともに、きちっとデータベースで管
   理しています。

   届いたお手紙やご意見などは、まず私が一つ一つ拝見させていただき、
   匿名などを除いて、全てに対して文書で回答するようにしています。ま
   た、集約したものを、広報等を通じて情報発信しています。本年度から
   は、皆さんのご意見や市の回答を市のホームページにも掲載したいと考
   えています。
   なお、このことは市職員の問題解決能力の向上や意識改革にも大変役立
   っています。

   「市長への手紙」は、市役所をはじめ市民病院、図書館、各コミセン、
   市内のコンビニエンスストアなど35ヵ所に設置しています。

   皆さんからのご意見は、全て貴重な財産です。「市長への手紙」お待ちし
   ています。

   ≪体系的にまとめたパンフレット「小野市の行政経営」発行≫

   市長就任以来、「行政もまさに経営」という理念で、行政経営戦略として、
   「顧客満足度志向」、「成果主義」、「オンリーワン」、「先手管理」の4つ
   の柱を掲げ、施策を展開しております。

   この度、「小野市の行政経営−現状打破と新たな創造」というパンフレッ
   トを作製したところ、行政経営の具体的な方法まで載せたパンフレット
   は珍しいとして、7月13日(火)の神戸新聞の朝刊に掲載され、他の
   自治体などから多くの問い合わせが入ってきていささか驚いております。

   最近、長引く景気低迷で経済発展に依存した自治体運営が困難になり、
   民間の"経営手法"を導入した行政運営が必要といわれている中で、民間企
   業出身の私が実践している行政経営の手法と実現した施策をパンフレッ
   トで紹介しました。

   その経営手法は、職員自らが達成目標を立て、結果とプロセスを評価す
   る「方針管理制度」。実績により管理職の給与に差をつける「インセンテ
   ィブ給」の導入。グループ制などの業務経営方式。QCD+社会的責任
   重視の入札制度や人件費の抑制などのコスト低減方法。また、「情報は市
   民の財産」と情報管理の考え方を改めた多様な広聴のしくみとシステム
   づくりです。

   最近、衛星テレビBSジャパンや日本経済新聞社主催の公会計改革会議
   のパネルディスカッションへの出演依頼がありました。また、近日中に、
   市民との懇談会も予定にあがっており、このパンフレットは、市民の市
   政への理解を深めていただいたり、本市を訪れるほかの自治体の視察団
   などへのPR資料として使用する予定です。  

   ≪衛星放送BSジャパン「熱中トーク」への出演≫

   7月18日(日)、午前9時からの衛星放送BSジャパンの「熱中トーク」
   という番組に出演しました(再放送:7/25)。ご覧になられた方もいらっ
   しゃると思います。

   インタビューの内容は、民間企業に勤めていた感覚から見て、当時の市
   役所はどんな点が問題だったか。それをどう変えたか。行政の構造改革
   が叫ばれている中で、今後の行政のあり方などについてでありました。
   インタビューの内容について、少しご紹介したいと思います。

   まず、最初に気づいたのは、仕事の成果と報酬が連動しない社会だと思
   いました。仕事をしてもしなくても報酬に差がないということです。次
   に、行政のやり方は画一的横並び、前例踏襲型の施策遂行だということ
   です。そして、CSつまり「顧客満足度志向」の欠如です。

   実績・成果主義については、公務員制度に原因があり、一地方自治体で
   はどうすることもできないのですが、小野市では独自にインセンティブ
   給(刺激給)という制度を新たに設けて、成果に応じて管理職のボーナ 
   スに僅かですが差をつけるようにしております。

   また、「出る杭は打たれるのではなく、出ない杭は地中で腐るだけ」、「ま
   ずはやってみなはれ」と職員にげきをとばすとともに、職員自らが達成
   目標を立て、結果とプロセスを評価する方針管理制度を導入して、職員
   の意識改革を図り、業務のやり方を抜本的に見直しました。
   
   ≪「市長への手紙」お待ちしています≫

   今年も7月1日から「市長の手紙」を始め、14日現在で、29通36
   件のご意見をいただきました。まちづくりに関して、日ごろ市民の皆さ
   んが感じておられる意見などをお聞きしたいとの思いから実施し、今年
   で5回目となります。
   広聴業務には、「市長への手紙」をはじめ、市政懇話会、まちづくりモニ
   ター制度、子ども議会などがありますが、業務にあたっては3つの項目
   を基本に据え取り組んでいます。

   1つ目は、手法の多様性です。幅広い市民層から、多くの多様な声(要
   望・苦情・意見・提案など)をお聞きするためには、その手法も多様で
   なければなりません。
   届いた全てのご意見は、まず私が一つ一つ拝見させていただいています。

   2つ目は、聴いた声の活用と管理です。昨年は、ひまわりの丘公園に関
   することや図書館・アルゴ等施設に関すること、道路の整備に関するこ
   と、ゴミ収集等に関することなど163通(180件)のご意見をいた
   だきました。これらは、施策への反映と同時に、要望・苦情・提案等の
   内容別、項目別にデータベースで管理し、今後の市政への貴重な情報と
   して活用させていただいています。

   3つ目は、市民へのフィードバックです。「市長への手紙」などでいただ
   いたご意見は、匿名などを除いて、全てに対して文書で回答するように
   しています。また、集約したものを、広報等を通じて情報発信していま
   す。このことは市職員の意識改革にも大変役立っています。

   皆さんからのご意見は、全て貴重な財産です。「住んで良かったと思える
   まち、住んでいることを誇りに思えるまち」を実現するために役立てて
   いきたいと考えています。皆さんのご意見をお待ちしています。

   ≪157通の「市長への手紙」ありがとうございました≫

   今年も7月から8月の2ヶ月間、「市長への手紙」を行い、市民の皆さん
   からたくさんのご意見をいただきました。ありがとうございました。
   届いた「市長への手紙」は昨年並みの157通で、191件のご意見が
   寄せられました。手紙の内容は様々でしたが、届く都度一枚一枚拝見さ
   せていただきました。

   中でも、保育所や学童保育に関する福祉関係、信号機や防犯灯の設置な
   ど交通・防犯関係、幼稚園や小学校に関する教育関係、公園に関するも
   のなど、生活に密着したご意見が多く、また、今年から試行運行を行っ
   ているコミュニティバス、3月オープンの白雲谷温泉「ゆぴか」に対す
   るご意見も寄せられました。性別では、女性6割、男性4割の割合で、
   特に30歳代、40歳代の女性からのご意見が多かったようです。

   ≪図書館貸出冊数6年連続全国一位≫

   市民の皆様をはじめ多くの方々にご利用いただいている図書館、記録更
   新です。
   「日本の図書館 統計と名簿2003」(社団法人日本図書館協会編)に
   よると、貸し出し冊約59万冊を記録し規模別でトップ、しかも平成9
   年度から続く一位の座を更に更新し6年連続数全国一位となりました。

   これも皆様にとって利用しやすい図書館をめざしサービスへの創意工夫
   に努めてきたということと、来館された皆様のマナーが良いということ
   がやすらぎ感を与え、本に親しめる素晴らしい図書館環境を作りだして
   いるからだと思います。
   昨年は学校での調べ学習の資料や学級文庫として活用できる図書館資料
   を学校へ配達する「O・S・L図書館システム」をスタートさせました。
   (「O」=小野市、「S」=学校、「L」=図書館の意)

   また、本が図書館の棚に並ぶまでの過程やインターネットでの予約・検
   索を体験できる「図書館探検」のイベント開催や、家庭の中から読書意
   欲を高めていただこうとボランティアグループとの共催による講演会の
   開催など、従来の行政主導型でなく、利用者皆様が主になってご参加い
   ただける催しも行っています。

   ≪CS「顧客満足度志向」の追及≫

   以前、「日経ビジネス」の雑誌に、「民間出身市長鼎談」(日経BP社主催)
   に参加させていただいたときの記事が掲載され、それをご覧になられた
   方々から「記事をみました」「共感を覚えます」などおたよりをいただき、
   その反響の大きさにいささか驚いています。この鼎談は、地方再生が叫
   ばれる中「日経ビジネス」が全国698市区の財政データを分析したと
   ころ、民間企業出身者が首長の都市の方が健全であるとして、行財政改
   革のためにどのような取組みを行っているか語ってほしいというもので
   した。

   鼎談では、滋賀県長浜市の宮腰市長と千葉県鎌ヶ谷市の清水市長のいず
   れも民間企業出身の3人の市長でいろいろと議論をかわしました。長浜
   市は人口6万人、観光地としても全国的に有名な市です。鎌ヶ谷市は小
   野市の2倍の約10万人、首都圏のベットタウンとして発展した市です。
   人口や地域性・まちづくりの取り組み方も違いますが、市役所をサービ
   ス産業と位置付けCS「顧客満足度志向」がすべての基本であるという
   点で共通していました。

   今回は鼎談の中で議論したテーマの一つ、「顧客満足度志向」についてご
   紹介します。
   「お客様は神様」という言葉がありますが、いかに顧客=市民ニーズを
   追及していくか、民間企業も行政も同じなんです。具体的には、鎌ヶ谷
   市では市民を交えたワークショップやタウンミーティングの実施、長浜
   市では公民館など使用する市民の自主管理がなされているようです。小
   野市では、市民参画にするために多様な広聴システムという仕組みづく
   りからはじめました。

   市民サービス課というセクションをつくり、市長への手紙やメール・ハ
   ートフルサービス意見箱・市政懇話会(タウンミーティング)・行政サー
   ビス研究グループ・まちづくり女性リポーター・子供議会・女性議会な
   ど多様です。みなさんからの意見は、全てコードナンバーをつけてデー
   タベースで一元管理し、必ず関連部門から文書で回答する仕組みにして
   います。みなさんからの意見とそれに対する回答は私が全て目を通して
   おります。

   市長に就任してから昨年までで3,304件の意見が寄せられました。
   「市長への手紙」などの広聴の仕組みには2つのねらいがあります。
   1つ目は、各部門の問題解決能力を養い、職員の意識改革・自己啓発を
   促すことであります。受付から回答までの期間も管理していますので、
   最近ではずいぶんと早くなりました。
   2つ目はいうまでもなく、みなさんの意見を市政へ反映させることです。

   みなさんからの意見は直ちに対応するもの、短期施策・長期施策で反映
   するもの、対応できないものなどに区分し、きっちりと管理しています。
   みなさんからの意見は、全て貴重な財産です。市民参加のまちづくりを
   実現するために役立てていきたいと考えています。
   これからもみなさんのご意見をお待ちしています。

   以下は、タイトルのみ紹介する。
   ≪小野市出身選手1位、2位独占!県高校総体女子1500m・800m≫

   ≪「シンポジウム公会計改革会議」に参加≫   

   ≪小野まつり テーマは「未来」≫

   ≪小泉総理ほか閣僚全員が「酒米山田錦パン」を試食されました≫

   ≪「計算の甲子園」市立広島商業高校3年ぶり4回目の優勝≫

   ≪好評中の山田錦(酒米)パンが約70種類に増えました≫

   ≪第2の成人式エイジ・ルネサンス・パーティを開催!≫

   ≪社高校野球部センバツ出場決定!おめでとうございます。≫

   ≪北海道マラソン2度目の優勝おめでとう≫

   ≪小野うまいもんブランド募集!≫

   ≪行列!酒米山田錦パン工房≫

   ≪もう一つの甲子園「全国高等学校珠算競技大会」≫ 

   ≪県下初!「成人式大賞2004」に入賞≫

   ≪「私の好きな兵庫のまちなみ100選」に小野市から"3ヶ所"≫

   ≪県中学駅伝 旭丘中「2連覇」おめでとう!≫

   ≪近畿中学駅伝 旭丘中「初の栄冠」おめでとう≫

   ≪全国初!酒米パン4月から学校給食に導入≫

   ≪小野市の「オンリーワン教育」全国へ発信≫

   ≪小野市型ワークシェアリングが始動≫


6.感想

 はじめに、前記引用文が非常に長くなったことをお断りしておきたいと思います。しかしながら、今回の視察訪問で非常にインパクトを受けたものは、「方針管理制度」そのものもさることながら、その背景にある行政経営における確たる指針の確立であり、それが図らずも如実に表れているのが、この同市HPにおける市長のエッセイであったという印象を強く抱いたからです。
 方針管理制度については、前記のとおり、そのノウハウについては詳細に研修をさせていただき、また具体の採用については、まさしく担当職員は「いつでも気軽にお問い合わせください」との快いお返事であったので、これからも将来的に、小野市から学ぶべきものは多いと考えています。
 さて、応対いただいた職員の方々のことに話が及びましたが、私どもが庁舎を訪れた瞬間から同市を後にするまでの数時間、何点か、なるほどこの制度が生きているんだと感じさせられた場面がありました。
 まず、庁舎入り口に、われわれを迎えてくださる案内表示が整えられていましたが、通例に似ず、まことに誠意のこもったものでありました。
 休憩をはさみましたが、その折に議会事務局の前を通りました。そこは喫煙所になっていて、喫煙する人はその場でしばらくの時間を過ごすわけですが、そのとき、何気なく眺めることになるふつうの壁面に、さまざまに有意義な話題がちりばめられたチラシ、ポスターの類がさりげなく貼られていました。
 熱心な説明をいただいた後、いよいよ小野市を後にするという段になって、研修者全員に一枚の紙が配られました。それは、このたびの研修の間に撮影してくださった研修最中のデジカメ写真で、思いがけないお土産をいただくことができたのです。
 さらに、帰りの列車の時刻を気にするわれわれでしたが、「大丈夫ですから、ぜひ一度お立ち寄り下さい、車でご案内します」とのことで、現在市を挙げて整備に取り組んでいる「ひまわりの丘公園」に案内していただけました。その売店コーナーには、市長のHPエッセイにもある、米粉パンにを売るパン屋さんが出ており、まさしく行列ができ、そして産直売り場も人でにぎわっていました。
 思えば私どもは一過性の訪問客であり、もう二度とこの市には来ないかも知れません。にもかかわらず、そういう差別なく、来訪者にはこのように応対する、という感覚が、すでに身についているかのような好印象を受け、こうして振り返りながら感想を書く私の心中には、まことに良いイメージの小野市が定着してしまっていることに気づかされます。
 今年度の目標を数値で設定する、という、実務を知れば知るほど困難が伴うと、私などは気が重くなるような思いもありましたが、ちょっと担当職員に聞いて見ました。
 「ですけどたとえば議会事務局の職員さんが、数値目標を立てるといっても、どんな目標になるんですか?」
「それは、市民の傍聴者の数を設定したりするのです」
 なるほど。徹底した数値へのこだわりようです。
 むろん、市民への応対がよかったかどうかなど、到底、数値化にはなじまない業務の要素もあるはずです。しかし、考えて見ると「数値化できない」ということを言い訳にして、ともすれば「数値化することを怠る」という局面もあると言えなくもありません。
 「このシステムには無理がある」…こう考えてしまえば、それまでです。現実に、この制度は5年間の実績を積み、現在も運用されているのであり、そして拝見したところ、それは実際に成果を上げているように見えます。
 職員にとってみれば、小野市のこの制度に限らず、行政評価制度全般として、ずいぶんと余計な手間をかけさせる業務になるはずです。そこはやはり「トップの声だし、鶴の一声」。そして、それを現実の制度にまで作り上げた優秀なスタッフの存在が欠かせないと思いました。
 丸亀市がいま、必要としているのはまさにこうした制度だと痛感しました。しかし小野市のものまねだけでは、長続きするものではありません。「トップが言い続けること」「これでよしと思わないこと」、そのために、丸亀独自のシステムを、産みの苦しみを自ら体験しながら構築していくことが欠かせません。
 さて、話題が「方針管理制度」から少しそれますが、私は同市の「市民サービス課」について、ことのほか関心を持ちました。もう一度、同市を訪問して教えを請いたい、そんな思いにさせるのも、やはり彼ら職員の皆さんの振る舞いを体験したからかも知れません。
 このたびの視察には、たまたま同市のある議員が同席してくださいました。
 そこで質問をさせていただきました。
 「市民サービス課」というものができてみると、議員の仕事はどうなるのですか? また、市民からいろいろな問い合わせや相談が議員に寄せられますが、減ることはないのですか?」
 「市民から相談を受けると、市民サービス課をお教えしたり、またいっしょに行ってあげたりします。市民がひとりで行くのと、議員がいっしょに行くのとで、結果は同じです」
 そのようなお答えでした。私はことのほか、この答えが気に入りました。
 心の底から、「そうだ、そうでなければならない」そんな思いで、ひざを打ちたいような心地でした。
 そもそも議員とは何なのか、どういう仕事をすれば、報酬に見合う仕事と言われ、そして市民に満足と支持をいただけるのか…私は考えずにはいられませんでした。
 行政が、すべきことをしてないから議員に声がかかるのではないか。いや、そうではなくて、行政において、市民の声に対処すべきシステムが整ってないからこそ、市民は議員に頼るのではないか。私はこう考えています。しかしこのことは、今回の方針管理制度の視察とはひとまず切り離して、別のところで考えたいと思います。
 さらに話が飛びますが、小野市のHPを一瞥すると、市議会に関する情報提供の豊富さが目に飛び込みます。
 議事録検索などはもとより、市議会のライブ中継をインターネット放送で行っているほか、議事録は、例えば9月定例会が終わっても次の12月定例会まで待たなければ整いませんが、それを補う形で、市議会ビデオライブラリが準備されており、9月議会が終わればほどなく、その最新のビデオが視聴できるようになっています。そしてそのページには小さく、「こめビデオライブラリは小野市議会の公式記録ではありません」との断り書きが添えられています。まさしく、市役所は市内最大のサービス産業の拠点、とのスローガンの面目躍如たるものがあります。市役所のその精神は、きっと議会にも伝播しているのだろうと想像します。
 話題があちこちしましたが、ことほどさように、今回の小野市訪問は示唆に満ちた、驚きと啓発に満ちたものでありました。
 これまで、「議員は給料のほかに出張費をもらっている」と、ささやく声に小さくなっていた面がややもすればありましたけれども、それはそうではないと、今さらながら思いを深めました。できうることなら職員の方々の研修経費も削らずに大いに有効活用してもらいたいものでもありますし、今こうして旅費を使わせていただきながら、将来の丸亀市の構築に資するべく、学ばせていただいていることに感謝しつつ、議員としての「仕事」に、これからもしっかりと精励してまいりたいと、意を新たにいたしました。
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